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大阪家庭裁判所 昭和32年(家)941号 審判 1957年2月27日

申立人 ロバート・ジョセフ・スミス(仮名)

事件本人 馬場アイリン(仮名)

主文

申立人が事件本人馬場アイリンを養子とすることを許可する。

理由

本件申立の要旨は次のとおりである。

申立人は、米国ペンシルバニヤ州で出生して以来、同地に居住し、同地に住所を有する米国市民で、米国軍人として来日、大阪に駐屯中、馬場君子と知り合うに至り、一九五二年三月○○日婚姻した。以来申立人は、馬場君子及びその非嫡出子たる事件本人アイリンと同居し、馬場君子と協力して事件本人を実子のように養育して現在に至つた。そして、申立人は近く米本国に帰国するのであるが、事件本人を養子とした上米国に連れて帰り同地に於いて馬場君子及び事件本人と夫婦親子として円満な家庭生活を営もうと考ているもので、このことは、事件本人の法定代理人である馬場君子も進んで希望しているのである。

よつて当裁判所は申立人及び馬場君子についての家庭裁判所調査官五藤忠夫の調査結果、及び兵庫県○○市長発行にかかる馬場君子の戸籍の謄本を参照したところ、申立人の主張を認めることができ、この事実に基いて考えると、事件本人が申立人の養子となることは事件本人の将来により多くの幸福をもたらすであろうと認められるし、わが法例第一九条によると養子縁組の要件は、各当事者につきその本国法によつてこれを定むべきところ、養子となるべき事件本人の本国法である日本民法第七九八条但書によれば、事件本人は申立人の妻である馬場君子の子であるので、申立人と事件本人の養子縁組については当裁判所の許可を要しないが、養親となるべき申立人の本国法であるペンシルバニヤ州法には、わが民法のような例外規定はなく、成年者は誰でも未成年者を養子とすることができるがその場合には裁判所の審判を要する旨規定されているので、わが法例第一九条及び申立人の本国法に則り、本件申立を相当と認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 今谷健一)

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